自殺の事、知っていますか?
みなさんは『自殺』と聞いてどのような印象を持つのでしょうか。
「弱い人が辛いことから逃げた」 「周りに迷惑をかける」 「自分勝手な行動」
このように思う人が多いのではないでしょうか。
でも、実際はこの印象が間違っていることが多くあります。
自殺にまで追い込まれている人は、視野狭窄に陥っています。つまり、周りの事が見えなくなってしまっているのです。どれだけ解決策があったとしても、一度『命を絶つしかない』そう思い込んでしまうと、誰かが手を差し伸べない限り、自分の力だけでは、なかなか戻ってくる事は出来ないのです。死にたくて死んでいる訳ではなく、生きる事が出来ない状況に追い込まれているのです。
しかし、今の社会的な問題の一つにある孤立。誰にも手を差し伸べられることもなく、命を絶ってしまう、そういう人が多くいます。
「家族や友人、職場の同僚が気づいてあげれば」そういう人もいるでしょう。しかし、本人は自殺の兆候を隠そうとするため、なかなか気づけません。その変化に気づいたとしても「まさか死んだりしない」と思ってしまうのが一般的です。誰しも最初から「死ぬかもしれない」とは考えないものです。
身近な人の自殺を少しでも防ぐには、『もしかして』という視点でその人の変化に気づくことから始まるのです。
自殺の多くは、社会的な取り組みによって防ぐことができる。つまり、逆を言えば、何もしない社会は、多くの人を見殺しにしているのです。
社会が自殺に正しい知識を持つことによって、失わなくて済む『いのち』がたくさんあることを、ご理解ください。
どうしたらいい?
身近な人の自殺を少しでも防ぐには、4つの段階があります。
1.気づく 2.声かけ 3.傾聴 4.つなぐ
その後は見守っていくことになります。どの段階でも大切なことは『あなたは一人じゃないよ』という気持ちで行動することです。かけがえのない大切な『あなた』と共に歩んでいく事を、伝えてください。
簡単にこの4つの段階がどのようなものなのかを、このページ下段でお伝えしていきます。
ただし、誰でも簡単に最初からできるとは限りません。得意な人、不得意な人、様々だと思います。出来れば、各自治体等が行っているゲートキーパー研修(三重県ではメンタルパートナー研修)を一度受けていただきたいと思います。
そしてもう一つ、絶対に一人で抱え込まないでください。悩んだ人のそばにあなたがいるように、あなたのそばには私たちがいます。数多くの専門家もいます。みんなでつながりあって、共に歩んでいきましょう。
気づく
自殺にまで追い込まれている人は、その行動等に何らかの変化が見られる場合があります。本人は、その変化で、より追い込まれてしまう恐怖があるため、必死で隠そうとします。そのため、簡単にその変化に気づけないことは、少なくないのです。日ごろから、身近な人の行動に関心を持ちましょう。
なお、追い詰められている人によく見られる変化には、次のようなものがあります。
○不眠が続く ○原因不明の体調不良が続く ○お酒の量が増える ○仕事などで失敗が増える
○人との関わりを避ける ○自殺を口にする ○自殺を実行しようとする
声かけ
「そんな追い込まれている人に、どうやって声をかけていいかわからない」
そうやって構えてしまう人も多いと思います。ですが、特別な事は必要ありません。普段から話しているような感じで、声をかければいいのです。
「最近元気ないけど、どうした?」 「疲れているみたいだけど、夜眠れてる?」 「困った事があったら聞くよ」
声をかけても、最初は話してくれないかもしれません。様子を見て、変調が続くようであれば、継続して声をかけてみてください。「心配してくれている」と感じた時、その気持ちを話してくれるはずです。
ただし、しつこく追及するのは逆効果です。あくまで、普段のような感じで声をかけてください。
傾聴
この傾聴が、一番難しいかもしれません。追い込まれている人は、時に冷静な判断が出来なかったり、時に攻撃的であったり、受け入れ難い事を次々と語ることがあります。「それは間違っている」「そんな事を言ってはいけない」と、どうしても否定したくなることもあるでしょう。視点をその行為に充てるのではなく、そういう気持ちであることに充ててください。死にたいと言われた時は死にたいほど辛いのだという事、誰かを殺したいと言われた時は殺したいほど憎いという事、行為はしてはいけない事であっても、今はそういう気持ちであるという事、否定はしないでください。
傾聴の基本は『無条件の受容』です。否定せず、全てを受け止め、今まで頑張ってきた事を労い、相談してくれた事に感謝し、一緒に考えていくことを伝えてください。
ただし、ここで誤解の無いようにお願いします。『無条件の受容』は何でも受け入れる事とは違います。「出来ない事は出来ない」と、きちんと伝えてください。安易に期待だけを大きくしてしまわないように、現実を見て歩めるようにならなければなりません。
つなぐ
自殺にまで追い込まれている人が、そこから脱するには、とてもとてもエネルギーが必要です。関わり方を誤ってしまうと、相談を受けたあなたまでも、エネルギーを無くしてしまうかもしれません。決して、一人で何とかしようなどとは思わないでください。相談が出来る所は、県内にもたくさんあります。適切な専門家とつながり、みんなで支えていくことが大切です。
ただし、ここで注意が必要です。「これ相談先の一覧表だよ」と渡すだけでは、不十分な時があります。追い込まれている人の中には、窓口まで出かける事はもちろん、電話を掛ける事すら出来ないほど疲れ切ってしまっている人もいます。一緒に窓口まで行く、あなたが電話をかけて簡単な内容を伝えてから電話を代わるなど、確実に相談窓口につながるようにしてください。
次で三重県内の各種相談窓口の情報をお伝えします。